腕時計のユーザーインターフェースについて考察してみた~シニア層と話することで見えてきた本当の性能

私たちの親から腕時計の事で相談があり色々ヒアリングしているこの数日です。私たちもやや老眼らしき症状がで始めたり衰えを感じますが、親の世代になるともっと重要でしょう。

ヒアリングしていると半ばわがままとも取れる要件ですが、ごく当たり前に出てくるであろう要件でもあります。しかしこの要件を満たすものは中々少ないのが実情だと後に分かりました。特にデザインに関しては(好みの問題ですが)シニア層が求めているものが本当にあるのかな?という疑問をもたざるをえませんでした。

腕時計に求める要件

見やすい事

小さい文字が読みづらい老眼にとっては、文字盤のデザインがかなり重要です。大抵の場合長針と短針には夜光塗料が塗られているので針はホワイト系です。そうなると文字盤は黒っぽい色で針とのコントラストを確保するのが王道でしょう。文字盤の文字はゴチャゴチャしない程度に目立つ色を配して欲しいものです。

私は好みで長年ダイバーズウォッチを愛用しています。そこで感じるのは視認性の高さが確保されているものは往々にして黒い文字盤に白い文字、白い針というシンプルなデザインです。もちろんデザインによってはこの色使いでもごちゃごちゃしたものがあるのでそういうのは個人的にはパスします。デザイン性よりも見やすさが最優先だと思っています。

アナログ(針)式の時計であること

これは結構重要な事だと思います。数学的な知識はありませんが、時計は60進数の12(24)区切りという面倒な数の数え方をする時刻ですから、数値で読むか、視覚的(感覚的)に読むかは恐らく脳の違う部分を使っているのではないかと推測します。

直感的に分かりやすい、もしくは用途によってデジタルかアナログか、もしくは両方読み取れる時計を選ぶのはポイントだと思います。ちなみに私たちの親はアナログ(針)が良いってことで、デジタルはどうせ小さくて読めないから無くても良いとの事でした。まぁそういうものでしょう。ちなみに私はもっぱらアナログ派です。

時刻が正確なこと

これは賛否が別れる所だと思いますが、こまめに時刻のズレを調整するのは辛いというのは、結局目が見えづらいということも起因してると思います。加えて指先が不器用になっている&最近の電子制御式腕時計は竜頭ではなくボタン操作(モード切替)が増えていて、シニア層でなくてもこういうのは苦手な人が多いでしょう。

私はデジタル時計のモード切替とかも苦痛ではありませんが、竜頭による伝統的な操作が合理的だと思っているしムーブメントも機械式が好みです。個人的には竜頭が無くても問題は無いのですが、なんとなく竜頭で時刻のズレやカレンダーの修正をしている事に満足感を覚えます(w

こういう事が煩わしいと考えるシニア向けにはクォーツ式で正確なのが理想的でしょう。出来れば毎日時刻のズレを補正してくれる電波時計(時刻同期)が理想的ですね。基本的には手がかかりませんので使いっぱなしで大丈夫なハズです(例外が有りますが)。

防水性があること

水仕事をする際に腕時計を外すのを忘れて水の中に手を突っ込むことがあるそうです。作業の度にいちいち外すのも煩わしいし、外してそこいらに置くとどこに置いたか忘れてしまうことも多いのだとか。そういう訳で防水性能はシニア層向けの腕時計の基本機能として考えるべきなのかも知れません。

最低でも10気圧~20気圧防水は欲しいものです。いわゆるスキンダイビング(マリンスポーツ)程度の水に浸かるシチュエーションなら防水出来るというのがガイドラインでしょう。一気に選択肢は狭まりますが、ダイビング用(Air Divers 200m)程度の防水性能があればより安心です。私達の親にはコレを進めることにしました。ちょっと割高になります。

電池交換が不要であること

これは案外重要なことです。防水性を確保するという条件で一気に浮上してくる要件なのです。ダイバーズウォッチのほとんどが機械式時計(オートマチック) なのは防水性を確保する為に、電池交換で裏蓋を開け閉めして欲しくないという設計上の制限がつきまというからです。多少誤差が生じようとも機械式でゼンマイを巻いてくれて、電池の交換が何年間も不要であることは防水性の確保にも関わってくるからです。

しかし最近はよく出来た時代で、クォーツ式の電池交換が長年不要なものも多いです。例えばSEIKOのキネティック(動きによる発電)、CITIZENのエコドライブ(太陽光による発電)方式で二次電池に充電することで長年電池交換を不要とする正確なクォーツ時計が実現しています。この恩恵から防水性を確保することも可能となり、より正確で最低限のメンテナンス(時刻ズレの修正)程度で済ませるものも多いです。しかもさほど高価では無いのが嬉しいところです。

更に良く出来たもので、クォーツ+発電+電波=防水(メンテナンスフリー)という三拍子揃った腕時計も増えています。このクラスになるといわゆる全部付きなので、付加価値から結構な金額になりますが、それでもオメガ等の高級時計に比べれば現実的な価格でメンテナンスフリーが手に入ります。まさに日本のメーカーによる精密機器のお家芸という感じでしょう。

妥協点を見出す

腕時計で実現可能な要件をシニア層向けに当てはめていくと、言うまでもなく全部付きのものがベターであることは間違い有りませんが、残念な事に全部付きは大型になる傾向があります。私の知る限りでは電波時計と発電を組み合わせるとある程度のサイズ以下には作れないという課題がまだ残っている様です。このことは全部付きの腕時計のレディースモデル(非常に小さい)がほぼ皆無な事から分かります。実現出来たとしてもかなり割高になるでしょう。

そこで論理的に考えなくてはならない事は、何に重点を置き、何を妥協できるか?です。私の場合は、防水性を上位にもって来ました。すると電池交換はしたくない。だけど頻繁な時刻修正の手間は省きたい。そうなると機械式でなくクォーツ時計となります。妥協点は電波時計というところでしょう。そこまでメンテナンスフリーにする必要は無いと思うからです(言うまでもありませんが竜頭によるシンプル操作の時刻修正が前提となります)。

電波時計について

私の知る限り、電波で時刻を同期させる時計には、デジタル表示が有る/無いに関わらず内部的にデジタル時計の仕組みを持っています。そしてアナログ時計(メカニカル)の機構を何らかの方法で同期させています。先日はこのデジタル時計とアナログ機構のズレが原因でアナログ時計が正しく時刻同期しないという症状も経験しました。これは所謂12:00:00位置合わせという儀式を踏んで回避できましたが、それらの操作は全てボタンでモード切替をくり返しながら行いました。ボタン操作だけでこれを行うのは結構面倒な作業でした。

この様な複雑な修正操作は、竜頭による旧来の時間合わせには不要な概念です。 電波時計はトラブルが無ければメンテナンスフリーですが、トラブルの際にはシンプルかつ直感的な操作とは遠く離れた構造になっています。こんな身近なデバイスがいちいち時計屋さんに診てもらわないと分からないという、ブラックボックス化の方向に進んでいます。電波時計のデジタル表示とアナログ表示のズレ修正は、実際にやってみて取説が無いと絶対に無理だなと痛感しました。

という訳で私達の親には、CITIZENのPRO MASTER DIVER’Sモデルを勧める事にしました。クォーツ+ソーラー充電+防水の三本立てです。時刻がズレた場合はねじ込み式ではありますが旧来の竜頭による操作で対処出来ます。汚れたらどっぷりと水に付けてジャブジャブ洗ってもらって大丈夫だし、むしろそうして汚れを落としてもらった方が時計には優しいですからね。小さな埃を間に噛みこむとややこしい事になります。

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