Windows Home Server 2011の検証

PC・Server

Windows Home Server 2011の検証環境を作って機能的な事と設定項目の確認を行う。

とりあえずMSDNからISOファイルをダウンロードした。ライセンスはBizSparkなので用途はテストや評価、検証用に制限される(実業務には使えない)。ISOファイルのサイズは4.1GBなので片面のDVD-Rに焼けるサイズだ。

いちいちDVD-Rに焼くのも手間なので、仮想環境(VMWare)上での検証で良いかなと思った。しかしリアルなマシン(ノートPC)にインストールしておくと、クライアントを訪問する際に持っていけるので便利かなとも思った。冷静に考えてみた所、現時点持参してデモする必要性は無さそうなのでとりあえず仮想環境でテストしてみる事に決めた。

今回は、WHS2011のファイルサーバー機能と、Remote Web Access機能を検証したいと考えている。特にRemote Web Accessは使ったことが無いので、実際にテストしてみないとクライアントにご提案も出来ない状態である。

WHS2011の惜しいところは、CALが10に制限されていて、追加CALを購入する仕組みが無い点だ。まぁこのライトウェイトな感じが受けて、一時期Windows 7の代わりに安く購入して使うというのが流行ったOSで、本来のWHS2011の評価はあまり聴いたことがない。

この様な検証がBisSparkライセンスのお陰でMSDNから無料でダウンロードして利用出来るのは個人事業主としては非常にありがたい。個人事業主としてフリー宣言してようやく一年経った訳だが、資金的には余裕がある訳でも無いので、こういう面でのMicrosoftからのサポートは本当に感謝している。

さて、WHS2011のインストールにはちょいとハードルが高めのハードウェア要件がある。

  • 64bitのOSなので、64bitのマシンである必要がある。
  • HDDは最低160GB必要(システム領域が60GB、データ領域が100GB)

当初考えていたCore 2 DuoのB5ノートではハードディスクの容量が足りなかった。私が検証用に使うノートPCは、いわゆるウルトラブックのハシリでコンパクトなのが売りなのだが、HDDの規格がZIFなので気軽に大容量には換装出来ないのだ。換装出来るようにHDDを複数持っているが100GB以上のZIF HDDは持っていない。結果的にはVMWareにインストールして正解だった。

VMWareへのインストールは、Windows Server 2008 R2としてインストールする。WHS2011のベースは2008だというのを思い出した。VMWareは自動でそれを認識してくれた。HDDの容量だけは自動割り当てだと足りないので160GB以上に増やしてやることが必要だ。

インストール時にワークグループ設定を見落としがちなのでデフォルトから変更したい倍は注意しながらインストールすること。インストール後に変更するには、PowerShellを使って書き換える必要がある。ちょっとめんどくさい。

WHS2011には、ダッシュボードという、ちょいとNASアプライアンスちっくなインターフェースが準備されている。ここからユーザー登録をすると、そのユーザーアカウントでRemote Web Accessを使ってWebブラウザだけでインターネット経由でファイルをダウンロード/アップロードする事が可能になる。シンプルな操作なので、クラウドストレージを使ったことが有る人なら操作は容易だろう。これはこれで便利だと思う。

しかし、ダッシュボードからRemote Web Accessによる、ファイルへのアクセス権限は、読み取り/読み書きの権限しか無い。「読み取り」に制限すると、RWAの画面の中でアップロード機能が非表示となり無効となる。ダウンロードだけは可能という訳だ。

ここで、Windows Serverの経験が有る人は、WHS2011の概念に戸惑うというか、どうも中途半端さを実感する事になるだろう。ダッシュボードからは、ファイルやディレクトリへのアクセス権限の設定が、読み・書きの二種類しか設定出来ない為に、子フォルダには例外を設定出来ないからだ。

もちろん、Windowsのファイルブラウズからプロパティを操作して、親フォルダから継承されたアクセス権限に、拒否を設定すれば、子フォルダへのアクセスを禁止させることも可能である。WHS2011はダッシュボードからの簡単操作を前提としている割には、その操作は裏ではWindowsファイル共有の設定を簡単設定にしているだけで、NTFSが持つアクセス権限の柔軟な設定の可能性をスポイルしてしまっている。

素性は良いのにもったいない・・

検証してみた限りでは、RWAユーザー向けに公開するフォルダ(親)を、ダッシュボードから「読み取り」「読み取り・書き込み」の二種類の権限から設定しておき、その中にあるフォルダ(子)への例外設定は、Windowsファイルシステムのセキュリティ設定タブから行うという二度手間が生じる。

ただ、仕様が分かってしまえばWHS2011は案外イケてると気づくだろう。使用できるユーザーが10という制限に問題が無ければ、これはこれでいい感じではないかと思われる。

ただ、WHS2011が提示している仕様はファイルサーバーとしては抜けだらけである。これは完全にビジネスユースな視点からの発言なので無茶を言っているかもしれないが本当に惜しいのだ。

まず、ダッシュボードからの操作に依存している限りは、NTFSに標準装備のグループという概念が活用出来ない。アクセス制限がグループ単位ではなく、ユーザー単位になっているからだ。

もちろん、ダッシュボードでユーザーを登録すると、強制的にwssusersというグループに属する等、見えないところでグループ機能は使っている。例えばセキュリティポリシーにはグループ単位で定義されたりしているのでNTFSの仕組みを利用しているのは間違いない。

しかし、ビジネスユース視点からは、ファイルサーバーとしての役目を担わせるには、ダッシュボードでの管理では物足りない。たとえそれがSOHO規模の10人(台)に満たない小さなグループでもそう感じる日は来るだろう。

また、抜けだらけというのは、ユーザー数が10と制限されている割には、Windows共有の制限が10には設定されていないこともある。例えばデスクトップ版Windowsの場合は、Windows XPの場合は10だし、Windows 7の場合は20というセッションの制限数が設定されている。しかしWHS2011にはそれが設定されていない。(コマンドプロンプトから、net config serverを実行すると確認出来る)実際に10ユーザー(台)以上アクセスしても拒否られる事は無いのではなかろうか(残念ながら検証出来ないが・・)。

更に、Windows標準のコンピュータの管理から、「ユーザーとグループ」を使えば、ユーザー数は10以上普通に登録出来てしまう。Windows Serverを管理してきた経験のある人なら当たり前の行為だが、この行為はライセンス違反とされるのだろうか?ユーザー登録はあくまでも登録に過ぎず、使わなければライセンス違反にはならないとも考えられる。どこまで活用して良いのかがライセンス的に不透明なのだ。

また、Windows共有には、同時接続数のライセンス(CAL)という概念が一般的であるが、WHS2011の場合は10で固定となり追加CALを購入して増やす事は出来ない。かと言って前述の通り共有リソースへのアクセス制限はかけられていない様に見える。唯一あるのはダッシュボードから11番目のユーザーを登録しようとしたら警告が表示されるだけだ。

このサーバーOSは非常にライセンスの解釈が難しい。色々検索してみたが、ユーザー数10まで使用できるという記述しか無く、これが同時接続10と言う事なのか、ユーザー登録が10までと言う事なのかがハッキリ分からない。

何れにしても、製品が「ホームサーバー」という位置づけである事から、登録ユーザーは10までにしておき、ダッシュボードから基本的なアクセス制限の設定を行い、例外設定はWindows(NTFS)に標準装備の方法で行うのがベターな運用方法だと感じた。この方法であればSOHO規模のビジネス用途でも便利に使えると思う。

なお、更に便利なツールとして、「コネクタ」と呼ばれるアプリをインストールする事が出来る。これをインストールすると、WHS2011を管理するアドミニストレータ権限でダッシュボードにアクセスするアプリケーション「Windows Home Server 2011 ダッシュボード」が使用できる様になる。インストール時にサーバー側にクライアントとして登録され、クライアントPCのバックアップをWHS2011に保存することが可能となる。このバックアップはフルバックアップが可能で、WHS2011に大容量HDDを実装しておけば、クライアントが万一トラブった場合でもリカバリーが容易という優れたバックアップソリューションである。そう考えるとストレージのサイズから考えても管理出来るのは10台が現実的だろうと思える。

また、ルーターの設定さえ済ませれば、Webブラウウザでインターネットから比較的容易にファイルサーバーにアクセス出来るので、スマートフォンを使っている人も自宅やオフィスのサーバーから欲しい資料を取り出せて便利では無いかと思う。

オマケ的な機能だとは思うが、ストリーミングサーバーとしてDNLAにも対応しており、まさにホームサーバーという位置づけだなぁという印象だ。

この製品、漠然としか認知していなかったが、こうやって検証してみると実は結構便利なソリューションだなと今更ながら思えてくる。残念ながらWindows Server 2012からはこのホームサーバー的位置づけのエディションが無くなってしまった。実質1万円以下で購入出来るWindows Server OSとして、バックアップソリューションとして、ホームエディションが無くなったのは残念に思える(Essentialsというエディションになるので金額は上がる)。

個人的には、Microsoft社がこの製品を上手く消費者にプロモーションできていなかったせいで普及しなかったからだとしか思えない。相変わらず良いものを作ってもアピールが下手だなぁと感じるが、それもMicrosoft社ならではなのかな?と思ったりもする。

ちなみにまだ購入可能だそうです。今年の12月までだっけかな。

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