Wi-Fi接続出来ているのに通信出来ないトラブル〜Intel Dual Band Wireless-AC 7260HMW 無線LANカードの大量死に遭遇した経験談

Intel AC7260HMW 無線LANカード PC・Server

仕事関係で、Wi-Fi接続出来ているのにネットワーク不通となる障害に遭遇し、原因を特定出来るまで往生したので記しておきます。

無線LAN通信が不安定な不可解な症状に振り回された

職場で採用されているノートパソコンの中でも一番古い機種で起こった障害です。業務システムが稼働しているサーバーに常時接続するアプリケーションを起動しており、常にサーバーと通信をしているシステムが動いています。

現場の運用が変わり、今まで有線LANで使用していたノートパソコンを無線LANにして持ち運びたい、場所を特定せずに操作したいという要望が出てきました。これを機会に振り回されることになりました。

システムの導入はベンダーが行っており、有線LANと無線LANには違うIPアドレス(固定)が割り振られており、LANケーブルを抜けば無線LANで使用できる様に考慮されていました。そのため運用上は使用者がLANケーブルを抜いてノートパソコンを持ち運べば、施設内の各所に配備されているWi-Fiアクセスポイントと通信して問題なく運用できる形態になっています。

しかし、先述の通り現場での運用形態が変わり、今まで有線LANで使用していたノートパソコンの有線LANケーブルを外して持ち出して使用した場合、サーバーとの接続エラーとなってしまうという症状が続出したのです。その為、無線LANアクセスポイントの故障なども疑ってリサーチをしたのですが、Wi-Fiアダプターは動作しており、アクセスポイントとの接続も出来ています。SSIDを確認しても接続出来ているという状態です。

不具合が生じている時にコマンドプロンプトからPINGコマンドを使ってデフォルトゲートウェイやDNSに接続試験すると不通となってしまいます。IPアドレスを固定でアダプタに割り当てているのも問題を特定するのに手間取った要素でした。(DHCP設定ならIPアドレスが割り当てられなくて判定が早かったかも。)

この不通状態が常時続くわけではなく、回復したり再発したりを繰り返すので、ハードウェア的な疑いも持って余らせている予備機(とは言っても撤去した中古機)から無線LANモジュールを取り外して交換してみたりしました。一時的に回復してもまた再発する・・・

Windowsの場合、ドライバの不具合で似たような症状が起こることも経験済みです。ドライバを当て直してみたりもしましたが、回復したと思いきや半日後、翌日にはまた再発するという状態でした。

私は過去の経験上、無線LANカード(モジュール)の不良では無いかと疑いましたが、同僚が「こんなに無線LANカードが不良となるハズがない(故障率が高すぎる)」というので、一旦その意見は保留することにしました。しかし数日経っても状況は変わらず現場からは苦情の連絡が途絶えません。

そしてついに他の部署も同様に無線LANで使おうとしたら通信エラーになるという連絡が来る様になりました。現場の運用形態が一斉に変わり始めたのでなんとか手を打たなくてはなりません。もはや特定の部署だけの問題ではなくなりました。(無線LANアクセスポイントの不具合では無さそう)

廃棄待ちジャンクPCから無線LANカードをかき集めた

業務用で使用しているため、液晶ディスプレイが割れたりして使い物にならなくなった同一型番のノートPCを保管庫で管理していました。言う慣れば部品取り機です。

この時点で無線LANカードが怪しいと思っていたので、これらの部品取り機から無線LANカードを部品取りすることにしました。保管庫からホコリまみれのジャンクPCを持ち出して掃除し、面倒なので片っ端から無線LANカードを部品取りしました。合計8枚集まりました。

全てIntel AC7260HMWという型番の無線LANカード(ノートPC内蔵型)でした。8枚も集めれば幾つかは良品があるだろうと考え、これをテスト環境で動作確認することにしました。

テスト環境のLinux OSでWi-Fiカードの良否を検証する

そこで業務用で使用していたノートPC(液晶不良・ジャンク)を一台検証用に取り出し、外部ディスプレイを接続しました。システム(Windows OS)が入っているストレージは取り外しました。OSを切り離すことで故障の疑い箇所の要素を減らせます。

ここで出番となるのがUSB Bootが可能なUSBメモリーです。USBメモリーの中にはLinux Mintをブータブル出来る様に構成済みです。BIOS設定を変更してUSBブートを可能にしてLinux MintをLive起動させました。するとWi-Fiアダプタを検出してWi-Fi接続先候補のSSIDが表示されました。業務用システムで使用しているWi-Fiにはアクセスせず、一般的なインターネット接続用のSSIDを指定して検証します。DHCPでIPアドレスを割り振られ、通信が可能になりました。予測がハズレたか・・・?

しかし10分ほどするとネット接続が不安定になり不具合症状が再現しました。Linux MintのWi-Fi状態表示には異常ありませんが、ネット接続が不通に陥りました。

コレって、完全に症状が再現したと言えるのでは?

見た目正常だけどネットワーク通信が出来ないというWindows環境で起きている不具合症状そのものが再現したわけです。OS環境を変更しても不具合の状況が再現したのでハードウェアの問題と言い切れそうです。

念の為ターミナルを起動してPINGコマンドを使ってデフォルトゲートウェイやDNSとの通信を試みますが全て不通です。やはり似通った症状を再現させることが出来ました。問題が発覚した当初は、OS(Windows)の問題やらドライバの問題やらも同僚から指摘されていましたが、ドライバを当て直したり、ドライバのバージョンを上げてみたりもしたのですが空振りでした。一時的に回復したりもするのですがまた再発するのです。

今回そういうのが煩わしいので、取り除ける要素を全て排除する為にLinuxのLive版を使いました。そのためOSやドライバは無関係だとほぼ言い切れます。やはりトラブルシューティングは論理的に進めていかないと無駄な時間と労力を浪費してしまいます。

試しにLinux MintのWi-Fi機能をOFFにしてみました。再びONにすると・・アダプタが有効になりません。dmesgコマンドで状態を確認してみるとWi-Fiアダプタに異常ありです。ログも参照してみたところどこかのタイミングでエラーを発生しています。(ジッと監視していたわけではないので・・)

Wi-Fiカード(Intel AC7260HMW)の不良だと特定出来た瞬間でした。

部品取りしてきたWi-Fiカードを片っ端から動作確認

後は部品取りしてきた8枚のWi-Fiカードを取り替えながら、USBブートしたLinuxで動作検証するのみです。このカードの特徴なのかも知れませんが、最初から認識しない個体はありませんでした。最初はWi-Fiアクセスポイントと通信してSSIDを選びパスワードを入力すると接続に成功します。しかし、10〜60分程度で通信不能になる症状が再現します。

蛇足かも知れませんが、ノートPCの裏蓋を閉じてないと症状が再現しないカードもありました。おそらく冷却に関わってくる条件だと思います。つまり熱に弱いということが推測できます。良否を検証する際には必ず裏蓋は閉じないといけないと学習しました。

USBブートなLinux環境で試すのは面倒でしたが、システム再起動をすると再びWi-Fi接続可能となるものもありました。不具合症状が維持される訳ではないので非常に厄介でしたが、無線LANカードが不良だと絞り込めたので手間と時間を使うしかありません。

もっとも、USBブートが面倒くさくなったので途中から保守用のSSDにLinux Mintをインストールしてそれで作業効率を改善することにしました。そのテスト環境下で8枚の無線LANカード全てを検証しました。SSDにインストールするとOSがすぐ起動するので時短には有効です。

その結果、3枚が2時間以上通信させっぱなしでも問題なし(良品)、5枚は20分も持たない不具合あり(不良品)と選別できました。やはりUSBブートを繰り返すのは手間がかかり効率が悪いので、8枚も検証する場合はSSDにインストールしてすぐにシステムを起動できる様にした意味はありました。

現場に投入して正常性を確認

使える無線LANカードを3枚手に入れたため、実際に現場に持ち込んで無線LANカード(モジュール)を交換しました。すると一発で通信の安定を手に入れることが出来ました。

同僚にこの状況を伝えると、8枚の内3枚しか正常品が無かったことを疑問視しながらも、検証状況を説明すると渋々納得してました。故障率が高すぎるのが不可解だったみたいですが、それが事実ですから無線LANカードの故障(不良)としか言いようがありません。

無線LANカードには寿命がある

職場で使用している業務用ノートPCの中でも、一番の旧型がこのノートPCでした。今までの使用状況を職歴の長い同僚に聞いてみると、無線LANスイッチは常時ONにしている状態で、LANケーブルを抜いたらすぐに無線LAN接続して使用できる様にしていたとのこと。(私は中途採用で働いているので昔の経緯は知らない)

導入時期からして、また常時無線LANカードをONしていたことから、経年劣化による無線LANカードの故障は道理でしょう。良品(まだ生きているカード)に交換すると通信が安定する訳ですからこれが事実です。

動作不良の無線LANカード10枚以上の写真
Intel Dual Band Wireless-AC 7260HMW 無線LANカードの大量死

無線LANカードには、寿命があるということを改めて再認識させられた次第です。

Wi-Fi接続とTCP/IP通信は別問題

ただ、この無線LANカード(Intel AC7260HMW)の特徴かも知れませんが、無線LANアクセスポイントとのネゴシエーションは成功して、その後のTCP/IP通信が失敗するという紛らわしい故障のしかたをするのが今回のトラップ(罠)でした。

アクセスポイントとの接続はOKでも、実際の通信が可能かどうかは別問題だという症状を経験したので、おそらく通信プロトコルの違いがWi-Fiの規格上あるのでしょう。今回の無線LANカードの故障状況ではアクセスポイントとの通信は出来るという中途半端な壊れ方をする特徴があったということをここに残しておきます。

無線LANカード(Intel AC7260HMW)は入手可能

業務用に使用している古いノートPCで台数も多いですから、PC更新までなんとか延命させる必要があります。しかし現場の運用形態が変わらなければ有線LANで使用し続けていたであろうことを考えると、間が悪かったと思えてきます。

とにかくお金をかけずに現場の状況を整える為に、無線LANカード(Intel AC7260HMW)を入手出来ないか調べてみたところ、Amazonで普通に売られていることが分かりました。1,980円程度で購入することができます。上司に報告して1枚だけ購入して互換性を確認する許可を貰って手配しました。

1枚だけ購入したのは、BIOS側でロックがかけられている場合があるので、使おうとするノートPCに適合するかどうかをまず検証する必要があると慎重に対応した次第です。

数日後現物が届いたので、用意しておいたLinux Mint環境で試してみました。

YouTubeによるLive配信を数時間流しっぱなしにしておいたのですが、不具合は再現しません。ノートパソコンとの相性問題なんかも問題無さそうです。まだ数枚必要になりそうだったので追加で5枚手配しました。

Intel AC7260HMWについて簡単にリサーチしてみると、2.4GHz/5GHzのデュアルバンドで、Bluetooth機能も備えているmini PCIe規格のカードでした。Wi-Fi 6対応のAX3000ということも分かりました。また、Intel AC7260はもう製造されておらず、PCIe規格としてはモデルだと分かりました。古い無線LANカードなのでそろそろ入手難になるかも知れません。(後継モデルはM.2規格に変わった7265なので互換性なし)

無線LANカード交換時の注意点

無線LANカード交換によって安定通信を手に入れることが出来ましたが、Windows環境では一癖ありました。部品取りした無線LANカードと交換した時は問題無かったのですが、別途購入した無線LANカードは同じIntel AC7260HMWであるにも関わらず別デバイスとして認識される様で、別の無線LANアダプタとして扱われました。(ドライバは自動で当たりました)

SSIDを選択して、パスワードを入力して、固定IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSの設定が必要でした。大した手間では無いのでこの辺りは基礎知識のある人なら問題ないでしょう。

なお、Linux環境下では同じ無線LANカードと認識する様で、いちいちSSIDを選択しなおしたりする必要はありませんでした。SSDにLinux Mintをインストールしてからは手間がかかりません。

Intel AC7260HMW無線LANカードの実装状態を撮影した写真

アンテナのコネクター1と2は黒いケーブルと白いケーブルとで分けられています。これはデュアルバンドなので、2.4GHz/5GHzとでアンテナが違うから色で分けてくれています。

コネクタ形状は同じっぽいので入れ違いでも接続出来てしまうと思います。必ず元の状態を写真撮影するなりメモするなりしておいて、同じ色のケーブルを接続するようにしましょう。入れ違いにするとアンテナの性能がキチンと引き出せませんし、場合によってはアンテナから放射されなかった反射波が生じて電波が逆戻りして無線回路を損傷します。

Intel AC7260HMWは古いPCIe規格の無線LAN+Bluetoothカードなので、入手できなくなったら詰んでしまいます。入手可能な内に必要数を確保しておいて、PCの更新時期が来るまでなんとか延命させなくてはなりません。既に5枚使い果たしたので更に5枚追加手配しました。

追記:数日後、部品取りした無線LANカードが不安定になった

一週間ほど経ってから現場から連絡がありました。また無線で使ってるとエラーが出るとのこと。新しく購入した無線LANカードと工具をもって確認しに行くと、Windows上ではWi-Fi接続状態になっていますが、コマンドプロンプトからPINGを飛ばしても応答なしです。同じ状態に陥っています。

再起動してみると通信が回復しました。しかししばらく待っていると通信エラーになったり回復したりと非常に不安定です。ジャンクPCから部品取りした無線LANカードはもう寿命間近だったのでしょう。

このPCは対応した時にまだハッキリと原因を特定出来てなかったし、交換する新品パーツが手元に無かったため、間に合わせの部品取り品で対応したのが災いして現場に面倒をかけてしまいました。保守パーツとして保有しておいたため今回は購入しておいた無線LANカードに交換することが出来ました。

Windows環境ではなぜか別の無線LANアダプタとして認識されるため、Wi-Fi接続設定、IPアドレスなどを設定して安定通信に回復させました。これで大丈夫そうです。

やはり、ジャンクPCからの部品取りはダメですね。もうこれは「Intel AC7260HMW 無線LANカードの大量死」と言って良さそうです。片っ端から動作不良品が出まくってます。古いパーツですから仕方ありませんけど。

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