ソフトバンクが米国の電子決済大手のPaypalと手を組み「PayPal Japan」を設立するという発表があったのが2012年5月9日。スマートフォン(当初はiPad/iPhoneのみ対応)のイヤホンジャックにカードリーダーアダプターを取り付けて、クレジットカードを読み取る方式の格安デバイスで普及させるという「Paypal Here」というサービスを発表した。
その後10ヶ月である程度目処が立ったのか、一部のAndroidデバイスにも対応させており、いよいよ本格的に普及させると息巻いている様だ。リンク先を読めば分かる事だが敢えて記すと、ターゲットはクレジットカード決済を導入していない小規模店舗・事業所らしい。格安のカードリーダーと無料のスマートフォンアプリを使うことで、初期導入費用を非常に低く抑えることが出来るのが最大のセールスポイント。
言い換えると、既存のクレジットカード決済会社にしてみれば、クレジットカード決済専用の機器に設備投資させるところでも利益を得ていた分、それが否定されたも同然なので大打撃である。恐らくトラブル時の保守(メンテナンス)も有償で行なっていただろう。
更に補足すると、決済専用の機器を格安で販売してしまい、設備面で利益は得られなくても、決済手数料5%で利益が出せるという裏が取れる。つまり既存のクレジットカード決済会社は、今までにかなりの利益を得ていたと言えるだろう。ま、コレはコレで問題点もあるが今回のPOSTはその話ではない。
そういう隙間に入り込んでくるのが得意なのは、Softbank、楽天である。楽天もちゃっかり「楽天スマートペイ」というサービスを開始している。この2人は金の匂いを嗅ぎつける能力は凄まじいものだなと、少しは見習わなくてはならないと反省している次第である(w
さて正直言って私は、この胡散臭さ漂う2社が群がってきた時点で、商業を営む側としては引くと思っていた。しかし現金決済が文化の一部で電子マネーの普及が難しかった日本国内の実情もずいぶん変化してきた。一番の例は電車の乗車券を購入せずに改札を通れる電子決済だろう。言うまでもないが一度使いはじめるとわざわざ並んで切符を購入する手間が無いという事はストレスレスでもう切符購入には戻れない。(私は電車にのることが少ないので面倒だが切符を買ってる・・)
こういう経験の積み重ねから、電子マネーによる決済はジリジリと我々の文化に入り込んできている。言い換えると消費者の常識を無意識の内に書き換えられている。そしてもはや電子決済が出来ない店は不便だなと言う所まで来ていると言っても過言ではない。
そこですかさずこの2社はこの隙間に入ってきた。設備投資が高価で導入出来ないという理由はもはや通らない。なぜならスマートフォンという拡張性のある通信機能付きのデバイスさえあれば、後は数千円でこのサービスを利用開始出来るからだ。言うまでもなくお金を支払う客側は各種クレジットカードを使用出来る。その決済手続きを仲介してマージンを抜くという隙間商法である。実にめざといし展開してきたタイミングも申し分ない。
さて私も元商売人の息子である。私の知る親の商売ではクレジットカード決済など無縁であったが、先述の通りもはやそれは無くては困る類の決済方法になっている。小さなお店だから電子決済に対応してないというのは、今時の常識からすると、ひょっとしたら商機を失っているのかも知れない。そろそろ小規模な商いをしている事業者もクレジットカード決済について考える必要に迫られているのではないだろうか。
ただ、私個人の心情としては、この二社(Softobank、楽天)に関して言えばあんまり良い気はしないので複雑でもある。なんせ売上の5%を決済手数料として抜かれていくわけだから、利用すればするほど利益も減るし、こいつらを肥やしていくことになる訳だ。なんとも複雑な気分である。
私は小さなお店ではなるだけクレジットカードは使用しないことにしている。小規模の場合は手数料の利率が高く店側の利益が減るからだ。知り合いの店なんかではクレジットカードを使用しないのは言うまでもない。
電子決済に疎い人は知らないかも知れないが、大規模の商売をしている場合は決済手数料の利率が低いという実情がある。要するに金を持ってるところはそれだけ優遇されるのだ。よって大規模な家電量販店等では遠慮無くクレジットカードを使っている。
実は一つ大きな懸念事項がある。数千円で調達出来るというカードリーダーの構造である。イヤホンジャックに差し込んで、専用のアプリを起動して、クレジットカードを通すと決済が出来るという手軽さ。この手軽さがリスクをはらんでいるのではないかと想像している。
もしかしたら、この犯罪行為をもっともっと容易に実現する手助けをする仕組みではないかというのが私の懸念事項である。ちょっと想像すると恐ろしい。社会問題に発展しそうな予感さえある。
具体的に話をすると、クレジットカードを読み取るデバイスは、リーダーも、スマートフォンもお店側のものである。スマートフォンには色々なアプリをインストールすることが出来る。もし、「Paypal Here」なり「楽天スマートペイ」のアプリとは別に、このリーダーで読み取った情報をロギング(記録)するアプリがインストールされていたらどうなるだろうか?我々クレジットカード利用者は、知らないうちに磁気データを記録される可能性(リスク)は無いのだろうか?もしこれが可能であれば、スキミングと何ら代わりはない。ちょっと頭の回る従業員がいれば、この決済に使用するスマートフォンに怪しいアプリを追加すること位は可能だろう。もはや個人のモラルなんてものに期待は出来ない時代だ。
技術というものは、便利な面だけでなく、不便な面(リスク)もよく考慮していなければならないと思っている。調べた限りこの様な事は(不安要素なので)当然ながら両者のWebサイトのサービス説明には明示されていない。しかし私の様なこの業界で技術に携わっている立場からすると、そこまで配慮されているのか?は凄く気になる。
なにしろ、「Paypal Here」の方はカードリーダーは1,000円代で購入出来る程度のデバイスである。セキュリテイなんて対して考慮されていないんじゃないかと勘ぐりたくもなって当然だ。
もし導入を検討している事業者さんは、そういう話を持ってきた営業マンに突っ込んで話を聞いてみて欲しい。それで納得出来るなら申し込んでも良いだろうし、そうでなければパスすべきだろう。
ちなみに私は、少なくともこの2つの方法でカードを読み取ろうとしていたら「やっぱり現金で払うわ」と言い直しそうだ。軽はずみに信用して良いものでは無いと感じている。スキミング等による不正利用が発覚したらカード会社から保証はされるハズだが、未然に防ぐことが出来るならそうすべきであろう。カード会社が保険で損害を保証してくれる分には良いが、犯罪者だけが小躍りして喜ぶのは許せない。きょうびそれくらいの慎重さは重要だと思っているしちょっとした正義感が許せないと思わせる。よって少しでもリスクを察知したら、クレジットカード決済を控えるのが得策と考える。
コメント