先日私が記した「いわゆる「テレビ電話」を使いたい」というPOSTで、SIMフリーのデータ通信デバイスに、DoCoMoが提供しているMVNOの通信カード(IIJmio)を組み合わせる方法が、通信速度の制限を受ける事を妥協出来るならば、最も安価にテレビ電話を実現出来る旨記しましたが、どうやらMVNOがここへ来て活性化する気配を見せている様です。
「ほぼスマホ」が狙うもの、MVNOの主戦場はスマホ? (nikkei TRENDYnet) Yahoo!ニュース(リンク切れ)
上記ニュースリンク先によると、現状、MVNOは事実上DoCoMoに限られる様な状況ですが、今後はauやSoftbankのMVNOも積極的に使われるようになり、データ通信の選択肢が増え、市場が活性化するという話です。所謂格安データ通信プランですね。
私自身もそうなのですが、音声通話は従来の携帯電話をそのまま使っているので、スマートフォンを使っていても音声通話は行わないという使い方もアリだと思っています。つまりスマートフォンはデータ通信専用端末として使います。そこへ来て最近はタブレットデバイスも増えていますから、ますます音声通話が不要でデータ通信だけを格安で使いたいというニーズがでて来るのは当然の事でしょう。
しかし、このMVNOという仕組みが一気に普及してしまうと、弊害を生じる可能性もはらんでいます。
私は長らく無線技術の仕事をしていましたし、学校でも無線通信を学んできました。その頃とは違って最近では携帯電話もデジタルですし、地デジ放送も無線を使ったデジタル通信になります。アナログはAM/FMラジオがありますが私は全然使っていません。もちろんアナログ方式による音声通信もまだまだ沢山ありますが、それは古くからの設備を使い続けるための方法であり、新しい設備は今後間違いなくデジタル化されるいっぽうでしょう。
私は学校でデータ通信(デジタル)を学びましたが、当時はまさか世の中がここまでデータ通信だらけになるとは想像もしていませんでした。当時の技術では通信速度も遅く学生の身ながら実用的だとは思えませんでした。しかしデジタル化する事でデータを圧縮したり、双方向で確実にエラーを補完しながら通信する事も可能になりますので、もう20年以上も経過していればもの凄い速度で技術が進化している訳ですから考えれば当然の流れですね。
しかし、慎重に見てみても無線通信という手段については、技術的に画期的な進化はありません。デジタル通信が主流となる前から、無線通信の技術はほぼ熟成されていたのです。無線という電波への情報を乗せる方法(変調方式)も地味に工夫はされていますが、華々しい技術はデジタルの世界での話の方が殆どを占めています。
デジタルの部分は画期的な方法がどんどん開発されている一方、無線通信の部分は使用出来る周波数が電波法で規制されていますし、好き放題色々な方法を導入するわけにも行きませんし、電波という限られたリソースを多くの人がいかに効率良く使用するかという事を考えないとどうしようも無いのです。テレビ放送で言えば「チャンネル」以上の情報を一度に放送することは出来ません。つまりチャンネル数以上の利用者が同時に通話(通信)をすることが出来ないのと同じイメージです。
例えばDoCoMoユーザーに加え、MVNOによってFOMAやLTE網を使用出来るユーザーが増えると、それだけ通信が集中します。特に人が多く集まる場所そして時間帯によってはチャンネルの奪い合いが生じてしまいます。電話で言うと「ツーッ・ツーッ・ツー」とい言う話中音な状態になる事が懸念されます。これらはデータ通信デバイスが処理していますので、待たされている感は人間には分かりませんが、通信の順番待ちは確実に生じています。
これを改善する方法無くしてauやSoftbankが気軽にMVNOという制度で、どんどん利用できる端末を増やすとそれだけ輻輳が生じやすくなります。ましてやMVNOの場合は通信速度に上限を儲けて意図的に速度を遅くしていますから通信に時間がかかりそれだけ長く無線チャンネルを使います。データ通信網に関して言えば帯域制限は効果がありますが、こと無線通信の部分については、それだけ長く無線を占有するので輻輳が生じやすくなるのです。
私はこのニュースを読んですぐに思ったのは、MVNOを普及させる前に無線通信部分のトラフィックを効率良くさばく工夫なり技術なりを導入しておく必要が重要だと考えています。それを後回しにするとほぼ間違いなく無線通信部分での輻輳が頻繁に生じるでしょう。無線で使用出来るチャンネル数には限りがあるのですから。
工夫の一例を上げれば、同一エリアでチャンネルの利用が混み合っている場合は、MVNOであろうが通信速度の制限をゆるくしてリクエストされた通信をさっさと終わらせてしまう必要があります。そうしないと次の通信順番待ちに順番が回りません。MVNOの遅い通信の為に待ち行列が長くなってしまうのは、正規DoCoMo契約ユーザーにとっては迷惑極まりない話ではないでしょうか?よって無線チャンネルが混んでいる時はMVNOだろうがとっとと通信を通信させてしまうのが好ましいと思うのです。
逆に、無線チャンネルの使用がガラガラで空いている状態であれば、通信をゆっくり処理してやれば良いので、MVNOユーザーは帯域制限を受けた遅い通信で利用させれば良いのです。そうすれば上位のデータ通信網への影響を予定通りに抑えることが出来ます。
しかしこの主張はまったくもって理不尽な話に取れます。MVNOという制限のある通信だからこそ安価に利用出来るようにしてやってる。なのに契約端末が増えると輻輳しやすくなるから通信速度の制限を解除する?そうなるとMVNO契約を増やすメリットは?という所に行き着きます。おそらくMVNOの弊害をDoCoMoはわかっているハズです。よって軽はずみに契約数を増やすことは無いでしょう。自社のユーザーにしわ寄せが行きますからね。auとSoftbankでもMVNOを・・・というこのニュース、軽はずみにはそうなって欲しくありません。きっと混乱の元となります。
MVNOの課題は、「無線通信」の部分をどう解決するかです。無線のチャンネル数を増やすには限界があります。かと言って基地局を増やせば良いという問題でもありません。電波と電波が干渉しあって通信が正常にできなくなるからです。ここの辺りは私が学校の授業で習った事と全く変わりがありませんし、おそらく画期的に改良させる事も無理でしょう。無線(電波)は有限の資源だからです。
私自身もMVNOによるデータ通信は利用しているユーザーですので、どんどん良いサービスになって欲しいと思っています。現状の仕組みで満足せず、どんどん改良して効率のよいデータ通信を提供して欲しいと願うのみです。
コメント